NVIDIAなどのGPU性能が向上する一方で、今後さらに重要になってくるのが、GPUやサーバー、ネットワークスイッチ間で膨大なデータを高速にやり取りするための「通信インフラ」です。
通信速度が上がり、伝送するデータ量が増えるほど、従来の電気配線では伝送距離、帯域、消費電力などの制約が厳しくなります。
そこでAIデータセンターで進んでいる大きな流れが、「電気配線だけに頼る構成から、光通信をより広い範囲で活用する構成への移行」です。
今回は、このAIデータセンターの「光化」で恩恵を受ける可能性がある日本の上場企業から、精工技研(6834)・サンコール(5985)・古河電気工業(5801)の3社を、技術、業績、株価、PER・PBR、信用需給まで同じ基準で徹底比較します。
💡 この記事でわかること
- AIデータセンターで「電気→光」への移行が進む理由
- 精工技研・サンコール・古河電工の役割と強みの違い
- SN・SN-MTなど次世代光コネクター技術との関係
- 3社の最新業績・PER・PBR・株価水準の比較
- 信用倍率・信用買残から見た短期的な需給リスク
- 将来のCPO(Co-Packaged Optics)まで含めたAIデータセンター光化の方向性
本記事は、株式市場の仕組みや一般的な取引傾向、ならびに特定の移動平均線データを基にしたテクニカル分析の解説・紹介を目的としたものであり、特定の投資商品・銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。実際の株式投資や資産運用には元本割れのリスクを伴います。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願い申し上げます。本情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当ブログおよび運営者は一切の責任を負いかねます。
まず結論!3社は同じ「光関連株」でも役割がまったく違う

今回の3社は、すべてAIデータセンターの光化と関係していますが、収益を得る場所は異なります。
精工技研(6834)は、光コネクター部品だけでなく、フェルール、研磨機、検査装置まで展開する企業です。北米ハイパースケールデータセンター向け光コネクター部品を5倍へ増産する計画を公表しています。
サンコール(5985)は、SENKO Advanced Componentsから次世代小型光コネクター「SNコネクター」の正式ライセンスを取得しており、通信関連製品の売上が急速に伸びています。
古河電工(5801)は、光ファイバー、超多心光ケーブル、接続部品、光デバイスなどを幅広く展開し、さらにグループ会社Lighteraが2026年9月にSN-MTのライセンスを取得しました。
つまり3社は、
精工技研=光コネクター部品+製造装置
サンコール=SNコネクターへの直接的な事業接点
古河電工=光ファイバーから接続部品までカバーする総合型
という違いがあります。
光コネクター関連3社の「市場データ&信用需給」徹底比較

ここからが投資家にとって重要な部分です。
技術が優れていても、株価がすでに大きく上昇していたり、信用買いが積み上がっていたりすれば、短期的な値動きは別問題です。
株価、年初来騰落率、PER、PBR、時価総額、信用倍率、信用買残まで同じ基準で比較しました。
※株価・PER・PBR・時価総額は2026年9月18日終値基準。信用残は2026年9月11日時点。2026年9月21日は休場日のため、9月18日が直近取引日です。
| 比較項目 | 精工技研 6834 |
サンコール 5985 |
古河電工 5801 |
|---|---|---|---|
| AIデータセンター光化での立ち位置 | 光コネクター部品+研磨・検査装置 | SNコネクター正式ライセンス企業 | 光ファイバー・超多心ケーブル・接続部品・光デバイスの総合型 |
| 主要材料 | 北米HSDC向けIntelli-Cross Pro部品を5倍へ増産 | SENKOからSNコネクターライセンス取得 | 13,824心ケーブル量産+LighteraがSN-MTライセンス取得 |
| 株価 | 5,850円 | 2,320円 | 3,901円 |
| 時価総額 | 約2,730億円 | 約790億円 | 約2兆7,567億円 |
| 2026年年初来騰落率 ※1月5日終値→9月18日 |
約+146.2% 分割調整後2,376円→5,850円 |
約+143.2% 954円→2,320円 |
約+270.1% 分割調整後1,054円→3,901円 |
| 2026年年初来高値 | 7,630円 | 2,541円 | 6,241円 |
| 高値からの下落率 | 約-23.3% | 約-8.7% | 約-37.5% |
| 予想PER | 28.42倍 | 11.15倍 | 26.14倍 |
| PBR | 7.35倍 | 1.99倍 | 6.28倍 |
| 信用買残 | 1,357,700株 | 1,667,400株 | 16,592,100株 |
| 信用売残 | 291,600株 | 205,000株 | 1,066,000株 |
| 信用倍率 | 4.66倍 | 8.13倍 | 15.56倍 |
| 信用買残÷発行済株式数 | 約2.91% | 約4.90% | 約2.35% |
| 2027年3月期営業利益予想 | 120億円 前年比+55.2% |
85億円 前年比+19.3% |
1,230億円 前年比+92.6% |
| 需給を見る際のポイント | 信用倍率は3社で最も低いが、株価は年初から2倍超。期待織り込みには注意。 | 信用買残の発行済株比率は3社で最も高い。株価も年初来高値まで約9%。 | 信用倍率は最も高い。一方、買残÷発行済株比率は3社で最も低く、1,659万株という絶対数だけで判断するのは不適切。 |
| 主なリスク | 高い成長期待とPER・PBR、受注増を生産能力へ転換できるか | 通信事業拡大の実行力、中国・深セン生産への依存、信用買残 | 大幅上昇後の株価変動、信用倍率、光関連以外も含む巨大企業ゆえの事業分散 |
信用倍率だけでは「上値の重さ」は判断できない

ここは非常に重要です。
古河電工の信用倍率は15.56倍で、3社の中では最も高い水準です。信用買残も1,659万2,100株あります。
しかし、これだけを見て「1,600万株以上の巨大なしこりがある」と断定するのは正確ではありません。
古河電工は2026年7月1日に1株を10株へ株式分割しているため、株数そのものが10倍になっています。
さらに、信用買残を発行済株式数で割ると、
精工技研:約2.91%
サンコール:約4.90%
古河電工:約2.35%
となります。
この比率では、むしろサンコールの信用買残が3社の中で相対的に大きいことが分かります。
もちろん信用倍率15.56倍は古河電工の短期需給を考えるうえで注意材料ですが、信用倍率、信用買残の絶対数、発行済株式数、株式分割をセットで見る必要があります。
① 精工技研(6834)― 光コネクター需要を「部品+製造装置」で取り込む
北米ハイパースケールDC向け生産を5倍へ
今回の3社の中で特徴的なのが、精工技研です。
同社は光コネクター関連部品だけではなく、光コネクターを製造するための研磨機や検査装置まで展開しています。
2026年5月14日には、生成AIの普及によって世界中でデータセンター建設が進み、内部で大量の光コネクターが使用されていることを背景として、増産投資を正式発表しました。
国内本社では、北米ハイパースケールデータセンター向け光コネクター「Intelli-Cross Pro」部品の生産数量を、2026年10月をめどに現在の5倍へ引き上げる計画です。
さらに光コネクター用研磨機についても、生産能力を前期末比1.5倍へ拡大する計画です。
「ツルハシ型」の収益源も持つ
精工技研の面白いところは、光コネクターが増えると部品だけが売れるわけではないことです。
光コネクターの生産量を増やす企業は、研磨機や検査装置も増設する必要があります。
つまり、
光コネクター需要増
↓
コネクター部品需要増
+
研磨機・検査装置需要増
という二重の需要を取り込める可能性があります。
実際、会社は通常約2カ月だった研磨機・検査装置のリードタイムが半年程度まで延びていると説明しています。
2027年3月期予想を大幅上方修正
精工技研は2026年8月、2027年3月期の通期予想を上方修正しました。
売上高は410億円、営業利益は120億円、純利益は92億円の予想です。
営業利益は前年比+55.2%となります。
会社側は、AIデータセンターへの投資拡大による光コネクター需要、研磨機・測定装置の受注増などを修正理由に挙げています。
最大の注意点はバリュエーション
一方、2026年9月18日時点の予想PERは28.42倍、PBRは7.35倍です。
会社の業績成長は強いものの、株価も1月5日の分割調整後2,376円から5,850円へ約146%上昇しています。
したがって精工技研を見る場合は、
「光コネクター需要が伸びるか」だけでなく、「その成長期待が株価にどこまで織り込まれているか」
も重要になります。
② サンコール(5985)― 次世代「SNコネクター」への直接的な接点
SENKOから正式ライセンスを取得
サンコールはもともと、自動車関連の精密ばねや金属加工を得意としてきたメーカーです。
しかし現在、成長分野として存在感を高めているのが通信関連事業です。
2026年2月、米国子会社Suncall AmericaはSENKO Advanced ComponentsとSNコネクターのライセンス契約を締結し、3月10日に正式発表しました。
SNコネクターは「VSFF(Very Small Form Factor)」と呼ばれる次世代小型光コネクターです。
サンコールの発表では、従来のLCコネクターと比較して約3倍の高密度化が可能とされています。
大量の光ファイバーを限られたラックスペースへ収容する必要があるAI・ハイパースケールデータセンターでは、小型化と高密度化が重要になります。
通信関連売上は急成長
サンコールの通信関連売上高は、2025年3月期の49億6,500万円から、2026年3月期には69億5,900万円へ拡大しました。
さらに2027年3月期第1四半期の通信関連製品は、前年同期比+42.7%となっています。
HDD用サスペンション事業撤退の影響で全社では減収となった一方、通信関連製品はデータセンター需要によって伸びています。
2027年3月期の会社予想は、売上高560億円、営業利益85億円。
営業利益は前年比+19.3%の計画です。
会社規模が小さいからこそ業績インパクトが大きくなり得る
2026年9月18日時点の時価総額は約790億円です。
古河電工の時価総額が約2兆7,567億円であることを考えると、サンコールは会社規模がかなり小さい企業です。
そのため通信関連事業が数十億円規模で成長すると、全社業績への影響が相対的に大きくなる可能性があります。
一方、逆に言えば、SN関連製品の量産が想定通り進まなかった場合の影響も無視できません。
信用買残は3社で相対的に大きい
予想PERは11.15倍、PBRは1.99倍で、今回の3社では最も低い水準です。
ただし、信用買残は166万7,400株、信用倍率8.13倍。
信用買残を発行済株式数で割ると約4.90%となり、今回の3社の中では最も高くなります。
株価も2,320円で、年初来高値2,541円まで約9%という位置にあります。
「PERが低い=株価が安全」と単純に考えるのではなく、業績成長と短期需給の両方を見る必要があります。
③ 古河電工(5801)― 光ファイバーから接続部品までカバーする総合型
13,824心の超多心光ファイバーケーブルを量産
古河電工の最大の特徴は、光コネクターだけを作っている会社ではないことです。
光ファイバー、光ファイバーケーブル、接続部品、MTフェルール、光半導体デバイスなど、光通信インフラの複数領域を展開しています。
2026年3月には、グループ会社Lighteraがハイパースケールデータセンター向け13,824心の超多心光ファイバーケーブルの量産開始を発表しました。
従来製品比で2倍の伝送容量を持ち、限られたスペースで大容量の光ネットワークを構築することを目的とした製品です。
2026年9月にはSN-MTライセンスを取得
さらに2026年9月14日、LighteraはSENKO Advanced Componentsとの間でSN-MT光コネクター技術のライセンス契約を完了したと発表しました。
これによりLightera JapanはSN-MT製品を製造・供給できるようになります。
つまり古河電工グループでは、
超多心光ファイバーケーブル
+
高密度接続技術
を組み合わせた展開が可能になります。
データセンター需要で業績予想も上方修正
2027年3月期第1四半期は、売上高3,652億円、営業利益255億円。
営業利益は前年同期比+205.4%となりました。
さらに会社は、光ソリューション事業や情報コンポーネント事業でのデータセンター関連需要増を理由の一つとして、通期業績予想を上方修正しています。
2027年3月期予想は、売上高1兆5,300億円、営業利益1,230億円です。
ただし株価上昇幅も最大
古河電工の分割調整後株価は、2026年1月5日の1,054円から9月18日の3,901円まで、約270%上昇しています。
年初来高値6,241円からは約37.5%下落していますが、それでも年初から見れば大幅な上昇です。
予想PER26.14倍、PBR6.28倍で、信用倍率も15.56倍となっています。
したがって、「高値から大きく下がったから割安になった」とは単純には判断できません。
注意!SNの「SENKO」はセンコーGHD(9069)ではない

SNコネクターについて調べる際に、非常に間違えやすい点があります。
SENKO Advanced Componentsは、物流大手センコーグループホールディングス(9069)の子会社ではありません。
SENKO Advanced Componentsは、三重県四日市市に本社を置くセンコーアドバンス株式会社(Senko Advance Co., Ltd.)の100%子会社です。
したがって、9069を購入することでSNコネクター事業へ直接投資できるという関係ではありません。
この点は銘柄調査で特に注意が必要です。
さらに先を見るなら「CPO」が重要になる

AIデータセンターの光化は、ラック間や機器間だけで終わるとは限りません。
今後注目される技術の一つが、
CPO(Co-Packaged Optics)
です。
CPOでは、ネットワークASICなどの半導体の近くまで光変換機能を配置することで、高速な電気信号を伝送する距離を短くします。
これによって帯域密度やネットワーク部分の電力効率を改善することが狙いです。
つまりAIデータセンター関連株を見る際には、GPUだけでなく、
光ファイバー → 光コネクター → フェルール → レーザー光源 → 研磨・検査装置 → CPO
という周辺部品・製造装置まで見る必要があります。
3社の違いを整理すると
-2.jpg)
精工技研(6834)は、光コネクター部品に加えて研磨機・検査装置まで展開しているため、光コネクター生産量の増加を複数の製品群で取り込める点が特徴です。
サンコール(5985)は、SENKO Advanced ComponentsからSNコネクターの正式ライセンスを取得している点が明確な事業上の接点です。会社規模が比較的小さいため、通信関連事業の成長が全社業績へ与える影響も大きくなる可能性があります。
古河電工(5801)は、光ファイバー、超多心ケーブル、接続製品、光デバイスなど複数領域をカバーする総合型です。さらにLighteraによるSN-MTライセンス取得によって、高密度接続分野にも展開を広げています。
つまり、3社は同じAIデータセンター光化関連株でも、
精工技研=光コネクター部品と製造装置
サンコール=SNコネクター量産への展開
古河電工=光通信インフラを広くカバー
という違いがあります。
まとめ:AIデータセンター「光化」はGPUの次に見るべきテーマの一つ

AIデータセンターでは、GPUの演算性能だけを高めても、GPUやサーバー間で膨大なデータを高速に移動できなければシステム全体の性能を十分に引き出せません。
そのため今後は、半導体そのものだけでなく、GPU同士をつなぐ「光インターコネクト」の重要性も高まると考えられます。
ただし、今回の3社はすでに2026年に株価が大きく上昇しています。
1月5日から9月18日までの株価上昇率は、精工技研が約146%、サンコールが約143%、古河電工が約270%です。
したがって、AIデータセンター光化というテーマが有望であることと、現在の株価が投資対象として魅力的かどうかは分けて考える必要があります。
「良いテーマか」
だけではなく、
「業績成長が株価にどこまで織り込まれているのか」
「信用需給が悪化していないか」
「次の決算でも受注・増産・利益成長が確認できるか」
まで継続して確認することが重要です。


